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関根孝氏「ハントのCATC(GTC)論争第2幕と小売競争」論文の試み(学術論文とイン ターネット)

流通・商業スクエア事務局 石岡大亮

流通・商業スクエアは、これまでにもいくつかの論文を掲載してきた。但しこれまでの論文は大学紀要などの 紙で公開するする事を前提として作成したものを転載したものである。今回の関根氏の論文は執筆時点からオ ンラインでの公開を前提としており、今までの論文作成とはいくつのか相違点が見られ、またいくつかの試み が行われた。今回の試みは必ずしも成功したとは言い難いが、後日本における文系学術論文とインターネット の関わり合いについていくつかの可能性と、いくつかの問題点が明らかになった。

I 経過

1 論文作成
今回の論文は関根氏の単著であり、研究途中でメールなどのインターネットメディアは使われていない。平成 13年4月16日にほぼ完成した状態で管理人に電子メールで引き渡された。このときのファイルは一太郎形式 (拡張子はjtd)であった。 管理人はファイルをPDF形式に変換し、流通・商業スクエア内のメンバーズエリアにアップロードし、18日に 豊橋創造大学の鈴木安昭氏らの流通・マーケティング研究会メンバー22人にメーリングリストを使い通知し た。対象は関東地方中心で有るが関西、九州まで及んでいる。 流通・商業スクエアは研究者間の意見交換意見交換のために専用の掲示板BBSを用意した。
2 オンライン研究会
論文はその後一週間に10回ダウンロードされた。一部の人からアクロバットリーダーがダウンロード出来ない とのことからCD−Rで配布した。掲示板への書き込みは削除する6月17日まで無かった。
3 出版
最終的に6月18日に校了した。最終原稿は専修大学出版局と管理人に引き渡された。管理人はPDF化した後6月 20日に当サイトに掲載した。これはリアルでの出版よりも先行して行われた。

II 今回の試みの特徴

電子入稿
今回の論文は文字中心で表がいくつか使われているだけであった。このため、メールでワープロソフトのファ イルの入稿が容易であった。グラフなどの図が含まれていたり、写真などの画像のスキャニングが必要な場合 はこのように速やかに行かなかったであろう。このことはインターネットでのでの学術情報の流通という事を 行う上で、全体に言えることである。つまり電子メディアでの公開のためには、過去行われていたように原稿 用紙に手書きでの論文作成ではなく、最初から電子入稿を意図した論文の作成が出版費用・時間という点から 前提条件なのである。 また、今回は著者自身による修飾が行われている。一般に紙媒体で出版する場合、編集・印刷に必要なのは本 文ではテキストデータだけで、文字の大きさを変えたり、フォントを替えたり、ルビ、イタリックなどの情報 は無用・無駄、それ以上に有害である。しかし今回、流通・商業スクエアでは本文には書誌情報(掲載雑誌 名、発行日等)を挿入しただけでいっさい手を加えずにPDF化した。このため著者の意図したレイアウトに近 い形で作成されていると考えている。関根氏はこれまで、論文作成そのものはパソコンを利用していたが、入 稿後はゲラ刷りに朱で校正するのみで自身のパソコンのデータを訂正してなかったが、今回は流通商業スクエ ア用にデータも校正した。
2 研究会
諸外国やその研究分野によっては完成前の論文を公開し広く意見を求める習慣があり、インターネット上でも 多くのプレプリントが公開されている。しかし日本、取り分け商学分野ではその習慣がないことから今回は限 られたメンバーだけに公開した。当初の案ではメールに添付して送り付ける方法も考えられたが、ファイルサ イズが116kbとなったことからサーバーにUPし、興味がある人のみダウンロードする形を採った。パスワー ドで保護できる専用の掲示板を用意し、活発な意見交換を期待したが関根氏本人の発言しか無かった。
3 公開
今回の論文は同時に校了し出版局、管理人とも同時に受け取った。管理人は原稿をPDF化し、簡単な要旨のペ ージを作成し、論文のページとトップページ、更新履歴のページに記述を追加した。
流通・商業スクエアでは論文本文をPDFファイルで公開し、その他にHTMLで簡単な要旨というか導入部を作成 している。本文をPDFファイルで公開しているのはいくつかの理由がある。ワードや一太郎などのファイルで は閲覧する側にも同じ種類・バージョンのソフトウェアが必要な事、テキストファイルでは表現に限りがある こと、またHTMLファイルではパソコンの機種やOSの種類・言語に依存せずある程度の表示が出来るものの表示 は閲覧側の環境によって変化するし、ページの概念が無く目次がつけられない、図などをつけるためには別 ファイルになる、レイアウトを固定出来ない為印刷に無かない、などの問題があり、さらに容易に改変・複製 でき(例えば名前だけ替えて自分のサイトに公開出来る)著者から不安の声があったからである。
この点、PDFファイルを見るために必要なアクロバットリーダーは無料で配布されており、各国語のOS用がほ ぼ全て用意されている。@(丸の中に数字の1)、T(ローマ数字)などの外字領域や文字コードの差がある 程度吸収される。などの利点があり、またある程度のセキュリティが可能である。
ただ、同時にHTMLファイルで要旨を作成しているのはPDFファイルを検索できるシステムが普及していないこ と、閲覧者が不用意に大きいファイルを開く事によるトラブル・ストレスをさけること(但しこのことは高性 能パソコン・高速接続では全く感じない)、万が一アクロバットリーダーがインストールされていないことを 考慮した結果である。
表1 各種ファイルの特徴
閲覧方法印刷表現OSの汎用性文字コードの違い全文検索可変性ファイルサイズ
textファイル○※1×(文字のみ)×最小
ワープロソフト△(同じソフトが必要)
HTML△※2小〜大 ※3
PDF○(無料)×小〜大 ※3
画像ファイル ○(操作性 に劣る)××最大
※1 ページの概念無し。※2 ページの概念無し、場合によっては紙からはみ出す。※3作成方法による

III問題点
1.いささか、くどいようであるが電子メディアでの論文流通には電子入稿が不可欠である。この点過去に出版 された論文をどう流通させるかと言う問題とも関わってくるが、紙媒体の論文をどう電子化するかという事に ついては技術的な解決策は見付かっていない。
2.また、今回の論文は一般的な日本語で有ったが、日本語の文字コードにない漢字や、外国語論文、多言語論 文や、ましてや古代の文字などの論文については現在のシステムではどうしようもない。
3.今回、オンライン研究会を行う上で、限られた人数での議論ということで、BBS(掲示板)を利用した。 他にメーリングリストの利用やネットニュースなどの利用も考えられたが、メンバーがいくつかのプロバイダ ー、大学に分かれたことから管理人が管理できる(必要に応じて削除できる)BBS利用となった。また、活 発な意見交換を期待したにもかかわらず、発言が一つもなかったのは参加した研究者の側がオンラインでの発 言になれていない事から、どうも身構える傾向が有るように思えた。
4.また今回事前に予想出来なかった問題が一つある。それは汎用の査読・校正システムが確立されていないこ とである。最初の関根氏の論文にはタイプミスやスペルミスなどが十数カ所あった。しかしその事を正確に著 者に知らせる方法が見付からなかった。結局プリントアウトしてボールペンで、朱を入れ手渡した。
これらの問題についての解決策は有るのだろうか。1の問題については今後発表される論文については、ほぼ 電子化されると見て間違いない。しかし、過去にどれだけ遡れるかについては今後研究の必要がある(このこ とについては後日)。2の問題については今後数年〜10年で現代に使われている文字については技術的には解 決する可能性が大きい。但し商業ベースには乗らない可能性があり、実際には普及しないかもしれない。ただ 古代の文字などの一般日常生活で使われない文字や、小国の言語などの問題、また新しい文字は文字コードを 使う限りは解決しない。PDFのようにフォントをデータの中に含めるデータ形式か、画像を張り付ける張り付 けることになるであろう。3の問題については意識の問題なので時間をかけるしか今のところ管理人には解決 策はない。4の問題についても今のところこれといって解決策はない。数カ所までならメールや掲示板などで 対応できるが、それ以上となると非常に面倒なのである。また複雑な話しも難しい。このことは校正する方、 される方共、慣れ必要なのかもしれない。校正という問題は他の事例では出てこなかった問題なので、今後さ らなる研究を要する。

IV今後の展開について
流通・商業スクエアのアクセス解析でわかるが、社会の論文への欲求は大きく、流通・商業スクエアへ訪れた人の多く が論文のページを閲覧している。このことから論文の収集・公開という、我々が目指している方向は決して間違っていな いと確信している。さらに流通・商業スクエアを通して研究者間の交流が広がり、研究が地域的、国際的発展する事に 寄与する事を目標とする。
もともとインターネットは学術情報の流通を一つの目的として誕生し、成長してきた。しかし日本では商用イ ンターネット網の整備によって初めてインターネットが一般化した。この為、日本では学術情報の流通はまだ 始まったばかりである。今回の試みは大成功だったとは言えないが、今後の発展に期待しつつ、日本の学術情 報流通(特に文系、商学、経営学)がもっと活発に行われることを願っている。

Ver.1.00 (2001.07.03) 公開
Ver.1.01 (2001.09.27)表1PDFの全文検索を×→△に、GoogleがPDFファイルの検索ができることによって。
Ver.1.02 (2001.11.12)メールアドレス変更 ご意見ご感想は掲示板、もしくはメールお願いします。


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