日本の流通100年
石原武政・矢作敏行編著
有斐閣 税込価格 3,675円
書評
豊橋創造大学特任教授
鈴木 安昭
流通機構の歴史的社会的性格を強調してきたものにとって近年の流通に関する歴史的な関心の高まりは望ましい。現在の流通の激変期を理解し、対応するために多くの業績をまとめることが要請されるが、この時期に本書を刊行したことは時宜をえたことである。
序章「流通100年の分析視角」、終章「流通100年を振り返って」(石原武政)には本書の意図、対象領域、構成そして今後の課題が記されている。第1部は「生産と商業の相克」表題に明らかである。大量生産を開始した生産者にとって流通経路上の卸売業者、小売業者との協調、相克が問題となり、戦前、戦中、戦後の歴史が整理される。加工食品流通(池田敦)では、菓子、調味料、醤油,ビール各産業の各チャネルが特約店、販社、店会、建値等を主軸に検討される。化粧品・医薬品流通(小原博)では、乱売の中での販社の設立、卸売業者の省略、小売業者の組織化、再販の制度化が中心となる。家電流通(崔相鐵)では流通系列化が総合スーパー・専門チェーンと相克を生みだしたことを論じる。衣料品流通(木下明浩)は既製服化、アパレル産業展開期の百貨店との関連、ブランド化を取り上げる。
第2部は小売業の諸形態で始まる。百貨店(藤岡里圭)は百年を通して、問題に直面しながらも展開してきた。経営革新を連続的に展開してきたチェーンストア(矢作敏行)の基盤には誠実な商法を実践した繁盛店が見出された。中小小売商(石原武政)は雇用吸収の場であり、社会的問題を発生させた。共同事業を行い、革新的小売商をも生出したが、激しい構造変化の中にいる。最終章の流通政策は(関根孝)は問題対応、特定課題、目的を考慮しつつ、時系列的研究を行っている。
流通理論ないし現状分析に業績のある研究者の視野を遡らせた研究という特徴がある。さらに込め、生鮮食品、自動車、石油製品等から産業財の流通にまで対象領域を拡大しsて総合すること、先進国・発展途上国のそれぞれの流通機構の歴史分析と対比することなど、本書を基盤としてさらに研究が進展することが待たれる。
日本経済新聞2005.02.06リンク
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