商業まちづくり−商業集積の明日を考える
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白桃書房
boople(日販IPS)商業まちづくり
オンライン書店BK1商業まちづくり
紀伊國屋書店商業まちづくり
ここではまえがきをご紹介します。本書ご購入の際の参考にしてください。(禁無断転載)
まえがき
「商業まちづくり」とは、ここでは小売業の振興を中心とした街づくりを意味する。しかし小売業の振興は、全く自由に行われてよいというわけではない。街づくりや小売業にとって最も重要な財産と言われる立地の基本的枠組みは「相撲の土俵」のようなもので外生的に与えられる。街づくりには計画性が、小売業の新興には競争性が求められる。計画性を放棄したまま、小売業の出店規制だけ緩和することは種々の問題を惹起する。これが本書全体の問題意識である。
小売業は単独で出店することもあるが、多くの場合集積する傾向がある。街づくりには、都市内外に住む人々に消費財を提供するそうした商業集積を欠かすことができない。特に中心市街地の商業集積は、消費者にとって買い物の場ばかりではなく、街の顔であり、生活文化の舞台でもある。近年、我が国ではこの商業集積が変化し都市そのものに大きな影響を及ぼしつつある。商業集積の重心が都心の百貨店や伝統的商店街から郊外型のショッピングセンターやロードサイド・ビジネスへと移行し、都心空洞化の問題を顕在化させ、地域社会のバランスを喪失させつつある。此処に、計画的な街づくりが放棄されている我が国の現状を垣間見ることができる。
本書は6章から構成される。第1章は、街づくりと商業集積について全体的に考察する。まず、小売業をめぐる環境変化を商業集積へ及ぼす影響という視点から紹介する。次いで環境変化や消費者の買物行動の変化に対応して、わが国の小売業の現状を商業集積との関わりでみる。さらに、郊外商業集積の膨張と中心市街地の後退、都市計画区域外における大型商業出現の出現、および大都市地域における伝統的商店街の停滞ないし衰退などなどにより、街づくりと商業集積の均衡を喪失しつつある現状を、いくつかのケースを紹介しながら明らかにする。これらとともに、小売業が集積する理由、地域における商業集積の有り様、さらには集積の変化方向に関して理論的に検討し、その上で街づくりと商業集積に対する政策的含意を考察する。
第2章は、商業集積に対する公共政策が論じられる。まず小売商業政策の変遷の中で商業集積がどのように扱われてきたかが検討され、以前は商店街のみが政策対象であったが、その後ショッピングセンターも含められ、街づくりという視点に置き換えられていく過程を追っている。都市計画制度の観点からは、商業集積を整備する手法について整備が図られると同時に、地方分権も進んできていることが確認される。次に、政府と共に公共政策の担い手である自治体がこれまでどのように商業集積に対して政策を行ってきたのか、横浜市の例として検討する。さらに、商業集積を対象とした街づくり政策にはどのような施策が含まれるのか整理をした上で、今後の課題を検討した。
第3章は、中心市街地の空洞化と再生を論じる。まず我が国中心市街地空洞化の現状、特に地方都市困難な状況が明らかにされる。次いで国が用意した中心市街地活性化の枠組みを紹介し、その根拠として「持続可能な開発」(sustainable devolopment)の考え方が提示される。さらに、こうした枠組みのもと各市町村で行われている活性化の取り組みがそれほど成果があげれていないが、その原因や残された課題そして克服策について、必要に応じて中心市街地活性化先進国イギリスとの比較を行いながら検証する。
第4章では、車に依存した消費者の行動が、中心市街地の衰退化を生み出し、郊外地域やロードサイドに新たな商業集積を形成している。彼らの回遊を伴う買物行動が、産業道路である国道16号線を、ロードサイドショップの集積する商業空間に変容させたのである。しかし、これらの空間は新保守主義的な市場主義者の活躍の場である一方で、交通弱者にとってはきわめて魅力のない空間に変貌した。グローバル化が進み、高齢化社会に入った現在、地方分権化を背景に真のローカルな意味でのTMOの働きが重要になってきている。市場至上主義中心に陥った従来型の街づくりから脱却しようとする動きが地方都市で芽生えつつある。このような現場の声を報告する。
第5章は、神奈川県川崎市の事例を取り上げ、現場の政策担当者として「かわさきTMO」に焦点を当て、商業振興政策とまちづくりについて考察する。まず、川崎市の商業振興政策の概要について、主に2002年策定の「商業振興ビジョン」を用いて明らかする。次いで、川崎市の中心市街地の現状と課題を取り上げる。また現場サイドの報告として「かわさきTMO」成立の経緯、組織、取り組んでいる主な事業を紹介する。そしてこれらの現実を踏まえて、TMOを総合的に行う人材(タウンマネージャー)の確保や事業資金の調達などTMOが抱える運営上の問題を指摘する。
第6章は、消費者の商業集積間の選択確率に関するハフモデルの今日的な意味を再
考する。論点の第1としてハフモデルの新しい応用の可能性を示唆し、第2にハフモデ
ルと質的選択理論の数理的な関係を考察する。はじめに、首都圏や阪神圏のように鉄
道網が発達した地域に住む生活者が、どのような要因によって出向ターミナル圏を選
択するかを検討し、心理的抵抗要因の影響で出向ターミナル圏が固定しがちになると
いう仮説を提示する。出向ターミナル圏にもとづいてマーケット・セグメンテーショ
ンを行えば、きめ細かいレベルで中心市街地の活性化に寄与できよう。次に、ハフモ
デルと消費者の質的選択モデルをとりあげて、前者がどのような論理から後者に包含
されるかを論じる。
このように、商業まちづくりという扱いにくいが、非常に重要かつ興味深いテーマに関して理論的、現実的に共同研究を試みた。まだ研究成果は端緒的段階にとどまっているが、本分野に関心をもつ研究者、大学院生、学生諸君、および中心市街地や活性化やTMOの関係者に対して、若干でも刺激を与え、貢献することができれば望外の喜びである。ご批判を賜りたい。
最後に、白桃書房の大矢栄一郎氏には、出版を快諾し、入稿が遅れたにも拘らず手際よく編集をして頂き御礼を申し上げたい。
なお、本書は刊行に当たり「平成14年度専修大学図書刊行助成」を受けた。
2002年1月


